2013年01月24日

在宅医療(看取り)が向く方、向かない方

久しぶりの投稿です。
当院では、癌末期、神経難病、重症の肺疾患、心臓疾患、腎臓疾患、脳卒中後遺症、関節リウマチ、高齢で寝たきりの方等に対して、患家への定期的な訪問診療を行っています。
これまでに多くの患者さんやご家族の方々と在宅医療の中で出会い、また在宅での看取りをさせて頂きました。その経験の中で、私自身が多くのことを学ばせて頂きました。今回は、特に人生最期の時期の過し方として、在宅での療養が適している方、そうでない方について私見を述べたいと思います。
医療は日進月歩に発展を続け、これまで治せなかった病気の治療ができるようになってきています。しかしながら、どんなに医療が進んでも、いずれは誰もが死を迎えるということも事実であります。医療の基本は「生」を追求することではありますが、一方では「死」を見据えた医療(実際には医療、介護、スピリチュアルケアなどを含む全人的対応になりますが)が必要な場面があるということも併せて皆様に是非知っていただきたいことです。

自分の病状が悪化し死を覚悟したときに、住み慣れた我が家の畳の上で人生最後の時間を過ごしたいと思うことは、人としてごく自然なことです。統計によると、約8割の方が、自宅で最期の時間を過ごしたいと希望されています。しかし現実に自宅で最期の時間を過ごせている方は1割余りに過ぎません。何故希望が叶えられないのでしょうか? その理由の主なものは、@家族の介護上の問題、A在宅医療への不信感(在宅療養では充分な治療が出来ないのではないかという思い)、Bご本人やご家族や関わる医療者が「死」を自然なこととして受入れる心の準備が出来ていない、の三つではないかと思っています。
1つ目の家族の介護上の問題では、実際に介護する方がおられない場合と、おられても介護者の体調が悪かったり、介護者に介護の意欲が無いこともあります。通常は、1.5人以上の介護者がおられることが望まれますが、主たる介護者の意思がしっかりしてさえいれば、介護者が1人でも、訪問看護や訪問介護他を駆使して、きちんと在宅医療が出来ているケースも多々あります。
2つ目の在宅医療への不信感については、まだまだ在宅医療の実際の内容が、一般の方にも医療者にも充分には周知されていないという点があると思います。我々在宅医療に携わる医療者は、これまでに度々講演会などを行い、在宅医療の周知を図っているところです。近頃は、ご遺族の方にも様々な機会で在宅での看取りの体験談のお話をして頂くこともあり、これからもそのような機会を重ねていくことが必要と思っています。
3つ目の「死」を自然なことと受入れることが出来るかという点ですが、実はこれが最も大きなポイントかもしれません。老いることや死ぬことを病的なことと捉えて医療によりしっかりと治療していくという考え方と、老いることや死ぬことを 人にとっては自然なこととして受容していくという考え方(生き方)があります。例えば、癌末期で治癒の見込みの無い方に、抗癌剤や放射線治療や外科治療等で徹底的に治療する方法と、癌に対する治療は行わずに症状を抑える緩和医療やケアを受けながら自宅で穏やかに過す方法があります。前者は、「死」を受容せず(できず)に「死」(病気)と最後まで闘う姿勢です。このようなケースでは、患者さん自身に本当の病状(寿命も含めて)を伝えていないことも往々にしてあります。後者は、「死」を自然なものと受容している姿です。患者さん自身もご家族も残された時間を理解し、出来るだけ有効な時間の使い方をされることが多いです。前者では医療者が中心となって治療方針などを決めていきますが、後者では患者さんやご家族の意向や生活の維持を最大限に優先し、医療者は目立たない黒子として、症状緩和をしながら生活をサポートしていきます。この両者は、個人の生き方や種々の条件の結果ですので、どちらが良い悪いという比較が出来るものではありません。ただいずれのケースでも「死」は確実に訪れます。そして私の経験の中では、前者に比べて後者の場合は、看取りの後に ご家族が満足感、充実感、そして清々しさを感じられることが多いように感じます。

今回は、「在宅医療(看取り)が向く方、向かない方」というテーマで、ポイントと思われる3点を中心に述べました。異論のある方もおられるでしょう。どのような最期の過し方が良いとか悪いとかの問題ではありません。それぞれの考え方、生き方、種々の条件の元で決まってくることですので、きっと全て正解なのだと思います。ただ、このような世界があること、このような生き方の選択肢があることを皆様に知って頂きたいと思って私見を述べさせて頂きました。
ご参考になれば幸いです。
posted by yclinic at 07:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記