2009年01月17日

ノロウイルス感染症対策:やなぎ医院

今年もノロウイルスの流行の報道が増えてきました。当院でも今年最初のノロウイルス感染の患者さんを確認しました。ノロウイルスの検査は、保険がきかないので通常は医療機関でもあまり検査は行いません。しかし施設での集団発生や院内感染が疑われれば、感染予防対策が大変重要ですので、検査が必須となります。

今から約2年前に、私は嘱託医をしている身障者施設で、ノロウイルスの大流行を経験しました。80人の入所者のうち約60名が感染するという惨憺たる状況でした。大流行の原因としては、最初の患者さんの吐物の処理のミスによるところが大変大きかったと思われます。
点滴による補液などの対症療法で何とか凌ぎ、幸い全員回復しましたが、ひとつ間違えば体力の無い障害者の方の場合には生命に関わることも有り得ます。
そのときの痛い経験を基に、その後は徹底して予防対策を行っていますのでその内容を以下にお示しします。もし参考になるような点があれば自由に利用して頂いて結構ですが、その際には自己責任でお願いします。
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ノロウイルス感染症対策
2009/1/20 やなぎ医院   

【特徴】もともと「牡蠣による食中毒」の原因ウイルス。以前は小型球形ウイルスと呼ばれていた。感染力が非常に強く、2次感染(人から人への感染)を起こしやすい。アルコールに抵抗性あり(消毒用エタノールは無効)。次亜塩素酸ナトリウム(通常は200ppmでOK、ウイルスが大量に存在する可能性があれば1000ppm)、または85℃1分以上の加熱が有効。
※次亜塩素酸ナトリウムの詳細については後述。

【症状】潜伏期間(感染から発症までの時間)は24〜48時間で、主症状は、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度。通常これらの症状が1〜3日続いた後、治癒し、後遺症も無い(但し抵抗力の無い高齢者では重症化することあり)。症状が無くなっても1週間程度(長いときには1ヶ月程度)ウイルスの排出が続く。また感染しても発症しない(キャリア、不顕性感染)場合や、軽い風邪症状のような場合もある。

【治療】現在このウイルスに効果のある抗ウイルス剤は無い。このため通常、脱水症状がひどい場合に輸液等の対症療法が行われる。

【診断】臨床症状だけでノロウイルスの感染の診断は出来ない。通常は患者の糞便や吐物を用いて、電子顕微鏡や、RT−PCR法などの遺伝子を検出する方法(医療保険適応外)でウイルスの検出を行い診断する。

【感染対策】ノロウイルスが感染・増殖する部位は小腸と考えられる。したがって、嘔吐症状が強いときには、小腸の内容物とともにウイルスが逆流して、吐物とともに排泄される。このため糞便と同様に吐物中にも大量のウイルスが存在し感染源となりうるので、その処理には十分注意する必要がある。

《吐物の処理方法》
◇必要なもの:防水の手袋2組、ペーパータオル数枚、ビニール袋1〜2個、1000ppmの次亜塩素酸ナトリウム(ペットボトルや噴霧器などに作っておく。なるべく当日に作る)
※後述する次亜塩素酸ナトリウムの詳細の中の有害性を
必ず参照のこと。
◇手順:
@患者があお向けの状態で嘔吐していたら、先ずは患者を横向きにする(誤嚥や窒息防止のため)。このとき患者や吐物への接触は最小限に留める。
A患者と接触した手を流水でよく洗い、その後1000ppm次亜塩素酸ナトリウムで手を消毒する。
Bビニール袋の口を広げて入れ易いようにしておく。防水手袋を2枚づつ着用する。
Cペーパータオルで吐物を拭き取る(このとき周囲に広げないように、中央へ向かって拭き取る)。吐物を拭き取ったペーパータオルをビニール袋に入れる。必要であれば数回行う(このとき周囲へ防水手袋が接触しないように注意する)。
D1枚目の防水手袋を外してビニール袋内へ入れる(このときも周囲へ接触しないように注意する)。
E吐物のあった場所にペーパータオルをかけ、その上に1000ppm次亜塩素酸ナトリウムをたっぷりかけて10分間放置する。
Fそのペーパータオルをビニール袋内へ入れる(このときも周囲に接触しないように注意する)。
Gビニール袋内へ1000ppm次亜塩素酸ナトリウムをたっぷり入れてビニールの口を閉じる(これでビニール袋内のウイルスを完全に消毒する)。

《次亜塩素酸ナトリウムの詳細》
@入手方法:ホームセンター等で、塩素系の漂白剤(例:ハイターなど)を購入。
A濃度:殆どの製品は、ほぼ次亜塩素酸ナトリウム5%程度。
B希釈方法:5%を50倍に希釈すれば1000ppm。250倍に希釈すれば200ppm。
C安定性:空気、熱、光、金属などに極めて不安定で、徐々に有効塩素を失う。即ち、なるべく使用の直前に希釈し、冷暗所に保管するほうが長持ちする。
D有害性:眼に入ると角膜を傷害し、処置が遅れると失明の恐れあり。ミストの吸入で激しい咳、肺浮腫を生じることあり(噴霧器を使用する場合は、細心の注意を払うこと)。飲み込んだ場合は、食道や胃粘膜を傷害し胃穿孔を生じることあり。長期にわたり皮膚に接触すると、皮膚炎、湿疹を生じることあり。

現在、ノロウイルス感染症は、医療機関、福祉施設、宿泊施設などを中心として急速に広まりつつある。今後は、学校や保育所などでの集団感染が予測され、家庭内感染とあいまってさらなる拡大が予想される。早急に有効性のある対策を講じることが必要。
posted by yclinic at 12:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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